" ジェラシーの後に "









「ストライク!バッターアウトッ!!」



ワァーッと球場に歓声が響き渡った。
その歓声を浴びている球場の中央に立つピッチャーの姿。
はばたき学園野球部のキャプテン、日比谷渉。



ここは夏の甲子園球場。
日本各地の強豪が揃い、少年達が汗水垂らして自分の実力を披露する。

去年からはばたき学園は強豪校の一つとして周りから注目を浴びていた。
去年は後一歩のところで負けてしまい、惜しくも準優勝で終わった。


今年は---------------------




「やったな日比谷!」
「キャプテンすごいッス!優勝ッスよ!!」
「みんなで先輩を胴上げだー!」


球場のど真ん中で日比谷の胴上げが始まる。
照れながらも喜びを隠せない日比谷は、うっすらと涙を流していたようだった。


授賞式を済まし、日比谷は一目さんへと駅へ向かった。
試合が終わった後自分の携帯に送られていた一通のメール。


"はばたき駅で待ってるね。"


見ていてくれた。
自分の勇士を見ていてくれた。


さん!」


駅の改札前で待っていてくれた最愛の人。
日比谷がはばたき学園の生徒になった時からずっと気になっていた人。
勇気を持って彼女の卒業式に告白し、受け止めてくれた人。


「お疲れ様。渉君。」


にっこりと笑ってくれたさんは、今までで一番嬉しそうな顔をした。
ずっと野球部のマネージャーとして支えてくれた さん。
今年はさんの居ない甲子園。
正直不安は一杯あった。

けど、自分の一番近い所でずっと見守ってくれていた。
不安になった時は声をかけてくれた。


「半分はさんのおかげです。」
「渉君の実力だよ。」
さんが傍に居てくれなかったら、俺ここまで投げれてないッスよ。」

そう言いながら頭を掻く。
照れたときの日比谷の癖だ。


「ね、渉君。試合前の約束、覚えてる?」

「忘れるわけないじゃないッスか。」



"優勝したら、その日にメダルをさんにプレゼントするッス!"




夢だった甲子園優勝メダル。
去年は惜しくも楯だった。

首から下がっているメダルを最愛の人にプレゼントするのも夢だった。


日比谷がメダルに手をかけたその時………



「あ!日比谷先輩!」
「ホントだ!日比谷先輩ー!」


はばたき学園の生徒であろう女子生徒が、日比谷を見つけわらわらと集まってきた。
あっという間に女子に囲まれてしまった日比谷。
はというと、日比谷の前から押しのけられ、輪の外へ放り出されてしまった。

「先輩今日の試合すっごく格好良かったです!」
「私ずっと見てたんですよー!」
「あ…ありがと…。」
「日比谷先輩写真撮っていいですか!?」
「あー!あたしもあたしもー!」


日比谷が口を挟む余裕もなく、女子生徒達は次々と話したり、写真を撮ったりしてくる。



まずいなぁ……


女子生徒の間から見えているを見ると、徐々に顔が曇ってきているのが解る。
寂しがっている…というよりは、怒っていると言った方が正しい。
一向にきゃーきゃーが止まない女生徒達は、の存在すら気付いていない様子だった。

「渉君。」

急にそう日比谷に呼び掛けたは、先ほどは違った笑顔で相変わらず囲まれてる日比谷に向かって言った。


「長くなりそうだから私あっちのコンビニに行ってるね。」

「あ!さんッ!?」


日比谷の呼びかけにも答えず、さっさと方向転換して行ってしまった
顔は笑っていた。
しかし伊達に半年付き合ってはいない。
あの笑顔は明らかに怒ってる笑顔だ。

日比谷は慌てて後を追おうとしたが、自分は女生徒に囲まれている。

さぁどうする。


「あの人だーれ?」
「さっき先輩と一緒に居た人ですよねー?」
「ひょっとして日比谷先輩の彼女?」
「えー!?うそー!」




「彼女だよ。あの人は俺の彼女だ。」










ふんっ。何よ、渉君の奴ヘラヘラしちゃって。
私との約束ほったらかしだし。
私が居るのに女の子達追い払おうともしないで。

何よ何よ……!



さんッ!!!」


コンビニへ入ろうとした直前、日比谷がの肩を掴んで止めた。
走ってきたのか、日比谷の呼吸が荒くなっている。

さ…ん。歩くの速いッス……。」
「女の子達はもういいの?」
「彼女が待ってるからって言ったら素直に去ってってくれたッスよ。」
「だったら最初からそう言ったらよかったのに…。」
「だ、だってそんな暇与えてくれなかったじゃないッスか。」
「渉君随分モテるんだね。」


「……さん、もしかして妬いてる?」

「ッッ!!!」


あ、図星か。
怒ってたんじゃなくてヤキモチ妬いてたのか。
なんだ……

そう思ったら自然と笑ってしまう。
怒ってるのに笑っている日比谷に、はますます真っ赤になりながら怒る。
ばかばか!と良いながら拳で胸元を叩いてくるは、とても一つ上の先輩とは思えない程可愛らしい。


さん妬いてくれたんスか?」
「ち、違うもん!私は別に…!」
「赤い顔で否定しても嘘にしか聞こえないッスよ。」
「わ、渉君!私怒ってるんだからね!」

言い終わらないうちに日比谷はの腰を掴み、自分の元へ引き寄せた。
そのまま抱き締めると、の目の前に首から下がっている優勝メダルがちらついた。

「約束…果たしますね、さん。」

一瞬だけ抱き締める腕に力を込めてからを離す。
メダルを自分の首から外し、の首にかけてやる。

「渉君…。」
「ホントはさんと一緒に行った時に取りたかったメダルですけど。」
「……ありがとう。」
「機嫌直してくれました?」
「も、もう!あれは渉君が悪いんだからね!」


また殴ってきそうなの腕を掴み、そのまま手を合わせて繋ぐ。
ちょっと強引な程度がには丁度良いのだ。
まだ少しムスッとしてただったが、手を繋いだままに向かってにっこり笑う日比谷を見ると、顔を仄かに赤くしながら日比谷の耳元で言った。




「メダル…宝物にするね。」











       〜 fin 〜







相互リンク記念に、南一輝さんから頂いた小説です。
「日比谷×主人公で、ヤキモチを焼く主人公→でも最後は仲直り」
というリクエストだったのですが、
主人公の可愛らしさが…もう…!
特に最後の、赤くなって拳で胸を叩くあたりが最高です!!

そして格好いいひびやんもいい!!
後輩の女の子に言った言葉がたまりません。萌えました!
もう何か、二人の仲良し具合がにじみ出ていて本当に素敵です。
卒業後甘々最高!!
こんな二人が見られて、最高に嬉しいです…!
そして今後も、末永くお幸せに…!

こんな素敵な作品を書いてくださった南さん、本当にありがとうございました!

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