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「あんた、意外と思い立ったら一直線やなぁ。
 おとといの夜のは、あたしもちょっとびっくりしたで」
新幹線内で駅弁を食べながら、隣の席のはるひが言った。

「俺の言う通りになっただろ。コイツ、けっこう衝動的な性格だし」
さらにもう一つ隣に座るハリーも、私を見てニヤリと笑う。
そして、こう付け加えた。
「いいか、次の駅に停まったら、俺が窓側の席になるんだからな。
 ちゃんと譲れよ」

子供っぽい彼の言葉に、私とはるひは思わず爆笑してしまった。
ハリーが不機嫌になったのは、言うまでもない。





野球部は応援部と共に、昨日甲士園に向けてはばたき市を発った。
見送りには、なんとはば学野球部とチアリーディング部、吹奏楽部が来て
駅の構内でエールを送ったらしい。

それにはね学応援部が応え、ちょっとした青春劇場になった。

夕方のローカルニュースでその様子は流れていた。
かつては王者であったのに、
その座を蹴落とした敵に敵に笑顔でエールを送るはば学といい、
その行為を許可するはばたき駅の皆さんといい、何とも粋な地域だなぁと思う。

甲士園に行くと、決めてしまえば楽だった。
ひたすらバイトをしていたおかげでお金はあったし、
行かないよりも行く方が、自分に正直になっていると思ったからだ。

そして今日、ハリーやはるひと共に新幹線に乗り込んだ。
甲士園では開会式が行われているはずだ。


新幹線に乗ったのは初めてだ。
修学旅行は、バスだったから―


面白いくらいするする動く窓の外の景色を眺めつつも、
私の心はかなり穏やかであった。






数時間後、目的駅に着いた。

ハリーは私達に
「いいか、明日遅れんなよ! 遅れたらクビだからなっ!」

こう言い残して
一人で私鉄線路の方へと向かった。

彼のお爺さんの家は、ここから一時間近く電車に乗る場所にあるらしい。


「あたしらはこっちの路線やでっ!」
はるひは楽しそうに、国営の路線を案内する看板を指差した。

はるひのお婆さんは、この駅から30分程の所に住んでいるそうだ。


「ここはおっきい駅やけど、ばーちゃん家に近くなると、
 どんどん畑が多くなって、回りが緑でいっぱいになんねん」
はるひの言葉通り、電車が動くと徐々に緑が多くなっていった。
新幹線が通る駅に近いとは思えないような、のどかな風景だ。

「これを見るたびに、ばーちゃん家来たな―って実感すんねん」
はるひはそう言い、目を細めた。




やがて電車を降りる。
田園風景の中を数分歩いて行くと、
少し古めかしい、大きな平屋が目に入った。

その家の方を見て、はるひが言った。
「あれが、ばーちゃん家や」


彼女は家の玄関に駆け寄って、ピンポンを押しつつ
「ばーちゃんっ!」
と叫ぶ。



はるひのお婆ちゃんは、はるひとよく似た感じの
にぎやかで人好きがする感じの人だった。

再長二週間という長居になる可能性があるため、
緊張して挨拶をしてお土産を渡すと、
お婆さんは顔をくしゃっとさせて笑い、こう言ってくれた。
「そんなん気ィ使わんでええねん。
 うちも一人暮らしやから、にぎやかなほうがええんや

 はるひと仲良うしてくれて、ありがとなァ」


元々ご主人や子供たちと住んでいたが、
ご主人は亡くなり、子供たちは独立した…ということで、
今はこの広い家を一人で守っているとのことだった。


「好きに使ってええよ。なんかあったら、うちかはるひに言うてな」
お婆さんは私に、空いている一部屋を貸してくれた。


身に余る厚遇に感謝しつつ、
夕食を食べてお風呂に入ったりして、甲士園応援遠征第一日目は過ぎて行く。

明日からが、本番だ。




志波くんに「応援に来た」という事実を知らせるために
夜の八時くらいにメールを打った。

どういう文章を送ろうかを、妙に考えあぐねてしまったが
色々迷った末に

「今:
 はるひのお婆さんのお家(甲士園の近く)に来てます。
 明日、応援に行きます。
 頑張って!」

という異常にシンプルなものになってしまった。


数分後に返ってきた返信が
「サンキュ:
頑張る。」
というものだった。
志波くんらしすぎてうっかり笑ってしまう。


眠る時、明日のことで緊張して寝れないのではないかと心配したが、
予想以上に疲れていたのか、そのうち眠ってしまった。










次の日。
朝、お婆さんの家を出た私とはるひは
甲士園の最寄り駅を出た所で、ハリーと合流した。

はね学は第二試合だったが、混むと思ったので朝一から甲士園に向かっていた。

だが、駅は構内も外も信じられないくらいに混雑していて、
携帯で話しながら探しても
ハリーの姿がなかなか見つけられずに難儀した。

「オッス。…甲士園の実力半端ねェ」
人ごみの中でやっと再開したハリーの第一声が、これである。

「そりゃ、一大イベントやもん。
 混んどるんは当たり前やと思ったけど…ホンマに人いっぱいやなぁ」
はるひは少し暑さ負けしたような声で言う。


私は、何も言えなかった。
向こう側に大きくそびえる甲士園の
ツタが絡まった外壁に見入っていたから。





私は「元」野球部マネージャーとして、
全ての球児達が目指す聖地を見つめる。

―こんな形で来れるなんて、思わなかった。
 でも、私はここに来て良い人間なんだろうか?

 同時に「野球部マネージャー」として来たかった…という気持ちが頭をもたげる。
 嫌だな、ふっ切ったはずなのに。



「美奈子?」
はるひが不思議そうな顔で覗き込んできたので、私は薄く笑った。




はね学応援席のチケットを買い、甲士園の建物の中に入る。
観客席に出ると、そこは円形の巨大な空間だった。


―大きい。

今まで、テレビの中でしか見たことの無い光景が目前に広がっていた。
鮮やかな緑の芝の色。

人の熱気も半端では無い。
日本各地から集まっているであろう応援の人たちが、
賑やかに出場校について語っていた。

真夏の太陽が、容赦なく私達を直撃する。
はるひは席に着き、凍らせていたペットボトルを顔にくっつけていた。







甲士園に、来たんだ。


私は思う。
例えどんな形であれ、私は甲士園に来たんだ。

かつて甲士園は、ずっと行きたい場所だった。

私は途中で野球部から抜けてしまったが、
こうして「応援」という形で、この場所に入ることができた。


私は、自分が甲士園に来たがっていたことを強烈に思い出した。
そして、横に座るハリーとはるひに感謝する。

この二人がいなかったら、私はこの太陽を味わう事もなく、
クーラーのきいた自宅でテレビを見ていたことだろう。


―本当にありがとう。

声には出さなかったが、二人に向かってそう呟いた。





第一試合の始まりと終了を見届けた直後に、
少し下の方、応援席の一番前に座っていた集団が席を立つ姿が見えた。

第一試合に出場していた学校の、応援チームであった。
学校にある応援団以外でも、
野球部や応援部に所属していない生徒やOB、地域の人が出場校を応援するために
応援チームを設立して、ツアー形式で甲士園に応援に行く場合がよくある。


試合の合間。
空いた最前列の席に、新たなる集団が移動してくる。
「あっ…」
私はそれを見て、思わず声を出した。

はね学の応援チームだ。
はね学の校章のプリントされたTシャツを着て、
深いブルーのメガホンを持っている。

そういえば、学校のHPで応援チームの募集を行っていた。
私が甲士園行きを決めた時には、もう募集を締め切ってしまっていたが。


面子を見てみると、意外にも三年生の数が多かった。
確かこの応援チームは、私たちみたいに最長で二週間泊まり込む訳ではなく
一試合ごとに、はばたき市から甲士園へ向かっているので、
それ程受験の妨げにはならないということか。


更に良く見てみると、何と応援チームの中に氷上くんと千代美ちゃんがいる。
私達三人は、彼らに挨拶に行った。
突然のことに向こうもびっくりしていたが、
やはり皆、はね学野球部を応援する気持ちは
同じなんだなと思うと嬉しくなった。





―そしていよいよ次は第二試合、はね学の出番だ。





選手達がグラウンドに出てきて、練習を始める。
よく知っている顔だ。

志波くん、部長の相川君、同級生の皆や後輩たち…
皆、いい顔をしていた。
私は自分がこのチームにかかわっていたことを、誇りに思う。


甲士園は、一度の負けすら許されない。
皆、きっとそれをわかっている。
だからこそ、あんなに引きしまった顔をしているのだ。


練習が終了し、彼らは応援席の前に来た。
彼らには、私ははっきりとは見えないだろうが、
私は彼らをじっと見つめる。




試合が始まった。

私達は周囲のお客さんと一緒に、大声ではね学にエールを送る。
相手は強豪の乱舞流だが、私達だって負けたくない。

とにかく必死で、選手の一挙一同を目で追った。
ハリーとはるひも真っ赤になって、精一杯大声を張り上げていた。
喉を大切にしているハリーが大声で叫ぶということは
彼にとっても、この試合が特別であることを意味している。


試合の流れとしては、両者投手戦になり、7回までは無失点だった。
志波くんは打撃の方は抑えられてしまったが、
反面、守りは凄かった。


三塁付近に来る球を、ことごとく受け止めることに成功していた。
他の選手なら落としてしまいそうなこぼれ球でも、彼は難なく捕まえる。

私の知っている志波くんは打撃優先型で、守備では少しムラがある選手だった。
彼はいつの間にか、自分の弱点を克服していた。


―志波くん、凄いよ。


心の中で私は言う。
今日ここで、彼を見ることが出来て良かった。



やがて8回表、はね学の攻撃に入った。
二塁に走者が出ている場面で、2年の子がヒットを打った。
二塁の選手は猛スピードで三塁へ走り、そのまま本塁に滑り込む。


1-0。

先制点だ!


私達は大いに沸いた。
応援団が旗をブンブン降り、学ラン部隊が大声を張り上げる。
後輩の天地くんの姿もあった。
そう言えば、あの子も頑張っていたっけ。

観客席でメガホンが鳴る。
はるひがはしゃぐ。
ハリーがガッツポーズを取る。
私は、ひたすら祈っていた。


先制点を手にしたことで、はね学は精神的に大きく優位に立った。
その後の追加点は無かったが、
8回裏の乱舞流攻撃を退け、9回表に一番打者がヒットを打った。


その後は3者凡退に抑えられてしまったが、
9回裏の乱舞流を封じる。

試合を終了させたのは、志波くんによるフライボールのキャッチであった。
彼がボールを捕えた瞬間、観客席が狂喜乱舞する。

下の席にいた応援団も、大喜びで歓声をあげながら手を叩いていた。



「はね学勝ったーーーっ!!!!」

はるひが私に飛びついて来た。
「美奈子、はね学勝てたで! 志波くんら、ホンマ凄いやん…」
彼女の声には、興奮と嬉しさと、ちょっとの涙が混じっていた。


試合終了のサイレンと共に、選手達が応援席の前に再度やってくる。
健闘した選手たちを見ていると、視界が少しぼやけた。

そして、志波くんを見る。
今日の影の活躍者。


―志波くん、気がつかないかもしれないけど、私、ここで応援してたよ
 凄いよ、志波くん



そんなことを思っていると、「彼」と目が合った。
志波くん本人だった。

志波くんの目には、もう試合中の鋭さは無かった。
「どうだ」と言わんばかりの笑顔を、一瞬だけ彼は私に向けてくれた。

…志波くんはもしかして、私のことを気づいてたのか?








やがて両校の選手達はグラウンドから去っていった。
はね学応援チームも、「席を取ってしまうから」という理由で
私達より先に甲士園から去った。

「じゃあ、次の試合で会いましょう。」
別れ際、千代美ちゃんがこう言ってくれたのが、何だか嬉しい。

「あの子も、結構のるタイプなんやなぁ。
 受験勉強でいっぱいいっぱいかと思ったけど、全然そんなことないやん」
はるひが横で、意外そうにこう言った。



続く第三試合、第四試合も観戦し、夕暮れの中で甲士園を出る。
一日中太陽の下にいたせいで肌は熱く、
はね学勝利の熱気がそれの熱っぽさを引き立てていた。


私達三人は、球場を出てひとまず
「イエーイ!!!」
とお互いの手を合わせた。

「さっすが俺が応援に来てやっただけのことはあんな!
 やんじゃねーか!」
ハリーは相変わらずの口調であったが
顔いっぱいの笑顔が、彼の真の気持ちを物語っていた。

素直なくせに、素直じゃない。


体が火照ってしまったので、少し休むことにした。
甲士園の最寄り駅から一駅先の駅で降りて、近くの喫茶店に入る。

そこで少し話した後、三人一緒の電車に乗って、各自の宿泊場所に戻ることになった。


私とはるひは当然同じ帰り道。
ハリーは、三つ程先の駅で私鉄に乗り換える。


やがて乗り換え駅に着き、
「アバヨ。じゃ、また試合の日にな」
と言ってハリーが電車を降りていった。

はね学の試合がある日以外は、年の近い従兄と遊ぶらしい。






はるひのお婆さんの家に着くころには、日がもう大分傾きかけていた。
セミの合唱が耳をつく。
この声を聞くと、ああ、夏だなぁと思う。










はるひのお婆さんが用意してくれた夕食を頂き、
お風呂に入った。


昨日と似たような時間に、志波くんに
「おめでとう。守備、すごかったね」という旨のメールを送った。
志波くんからは「ありがとう。次も頑張る」という感じの返事が来た。

返信を見て、私は目を閉じる。
本当に短いメールだけど、私と志波くんは今、確かにつながっている。




やがてもう寝る時間になったが、
志波くんとは別件で、色々と釈然としないことが起きていた。
疑問点が、頭をかすめる。

それは、はるひに関係したものだった。

時計を見ると、もう11時半になっていた。
流石にはるひの部屋に行くのは失礼かな…と思っていた所で、
トントンとふすまを叩く音がした。

「美奈子、今、起きとる?」
「起きてるよ」
間髪いれずに私は答える。

「…ちょっとあんたと話たいことがあるんやけど、時間、大丈夫やろか?
 眠かったら、無理せんでええから」
彼女の言葉に、私は言った。
「私も、はるひに聞きたいことがあったから平気。
 明日ははね学の試合も無いし」

それを聞いた彼女は、そろりと部屋に入ってくる。
パジャマ代わりのラフな姿が可愛い。

「すまんなぁ…」
申し訳なさそうな様子のはるひが何だか可愛くて、私は思わず笑ってしまった。

はるひは良い子だ。本当に。


彼女と私は部屋に寝っ転がり、高校生の女子らしく
少しうだうだしていたが、やがて私から本題を切り出した。

ずっと、聞きたかった言葉。

「ねえ、はるひ」
「何や?」
「はるひは、ハリーのこと、好きなんだよね?」

突然の言葉に、彼女は顔を真っ赤にした。
少し困ったようなそぶりを見せたが、どうせばれてると観念したのだろう。
恥ずかしそうに、小さく頷いた。


私は不遜な者にならないように、慎重に聞く。
「ハリーと私が仲良くしてて、大丈夫なの?
 いや、べ、別に何かナルシスト的な意味で聞いてるんじゃなくて…
 好きな人と、別の女の子が仲良くしてたら辛くない?

 まあハリーは、私なんか女だと思ってないだろうけど…」

はるひはしばらく沈黙していたが、やがて穏やかに笑った。
「…ホンマはな、初めはちょっと心穏やかじゃなかったねん。
 ほら、あたし、自分に自信ないやろ?
 美奈子みたいな子相手やったら、勝ち目ないわーって思ってたんや」
「そんなこと…」
「ええねん、美奈子は可愛いで?
 そこはあたしの本音や。受け取っといてや」

私に言わせれば、はるひの方が私が好きな可愛さだった。
この子は明るくて素直で、嘘を付く時ですら相手に罪悪感を感じる子だ。

寛容を装っても本当は自分勝手で、
最終的にはいらない物を罵倒してぶった切るような私にとって、
はるひの優しさ、分け隔てなさと鷹揚さは、本当に魅力的だった。

彼女のくるくると感情が出る大きな目も、私には羨ましい。



「…でもな」
はるひは言う。
「アイツをずっと見てたら、あたし、わかったんや。
 ハリーは美奈子を好きやけど、志波くんの友達として好きなんやって。
 ハリーも無駄に律義やなぁ。…アホやね」

それを言われて、今度は私が押し黙る番だった。


そんな私の様子を見て、はるひは真顔になった。
そして問う。
「なあ、あんた、もう気が付いてるんやろ?
 志波くんの気持ち」

「……」
私は何も言えなくなる。
心の中では、もちろん答えは出ているが。

はるひは、言葉を続けた。
「あたしはホンマに上辺の話しか聞いてないけど、
 志波くんは、あんたのこと、すっごく大切に思ってんねん。
 何やろうなぁ、わかるんや…そこだけは」





深夜の静寂が辺りを包む。
今の私達は、確実に世界から独立していた。

「私ね」
私は小さく切りだした。
「正直言って、太郎くんのことで好きとかわかんなくなって
 いっぱいいっぱいになっちゃってる…
 志波くんは本当に優しくて、強い人で好きだけど
 男の子として好きなのかって聞かれると
 まだ、答えられない。

 …卑怯だよね」


思わず、泣きそうな笑顔になった。

それを見て、はるひが言う。
「…あんた、まっすぐな子やなぁ。
 そんだけ真嶋に全力投球してたんやな。

 まぁ、先は長いねん。
 志波くんやったら、待ってくれると思うで」

「…うん。ありがと」
彼女の思いやりに対して、私は静かに頷くことしかできなかった。
でも、少し泣きそうになった。

目の前に、共感してくれる女友達がいる。
何て幸せなことなんだろう。


「私も、はるひのこと、全力で応援するよ!」
私の言葉に、はるひは再度赤くなる。
「…ホンマ、あたしもあんたには感謝してるねん。
 今回の応援やって、ハリーと二人っきりだったらきっと行けんかった。

 チョビみたいに応援ツアーに参加せんかったのは、
 ばーちゃんの家があるってことも理由なんやけど、
 正直、純粋な気持ちで野球部を応援しにいくつもりじゃなくてな…

 ハリーが個人で行くって言うたから、うちもそれに乗っかったんや。
 多分、ハリーはあんたが応援に行くことを見越して、
 あたしに甲士園行きの話を持ちかけたねん。

 だからあたし、あんたが来てくれなかったら…って思うと、
 怖くて怖くてしゃーなかった。

 ハリーが、うちと二人っきりの応援なんか嫌やって、
 いつ言いだすかとか思ってしまってな。
 気が気じゃなかったわ。

 …ごめんな。あんたの前で、こんなこと言うて」

「ううん」


「あたしがハリーと一緒に応援に行けたのは、あんたのおかげや。ありがと…」
「こっちこそ…志波くんの応援が出来て、本当に嬉しかった。
 ありがとう。」


何だかお互いてれ臭くなってしまったので、
「じゃ、お休み」
と言いあって、その後すぐに解散になった。


深夜に女子トークをやると、色々なものが見え始める。
でも確かなのは、私にとって、はるひがとても大事な存在だということだった。
それはもちろん、ハリーにも当てはまる。
もちろん、ハリーとはるひでは「大事」の種類が違うけど。

志波くんは…もう別の存在だ。
彼は明らかに、私の中で「友達」のカテゴリから外れ始めていた。


昨日とは対照的に、この日はなかなか寝付けなかった。
試合終了後に見た、志波くんの穏やかな笑顔が何度も脳裏に蘇った。




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デイジーとはるひの友情を書きたかったので、
ちょっと入れちゃいました。

応援チームのことは、ちょっと冗長になっちゃったんですが、
やっぱり生徒会は行きそうだなーと思って書きました。

瑛とクリスは、忙しくて多分テレビ観戦でしょうか…
でも、テレビ観戦でもはね学愛は熱いと思ってます!



2010.6.22

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